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掲載記事

読売ウィークリー 06.2.19号
掲載記事より一部抜粋

セカンドオピニオン外来 全国49病院の実力

主治医以外の専門医に、自分の病気の診断や治療法について意見を求めるセカンドオピニオンが、ここへきて急速に浸透し始めてきた。
それは、昨年から、多くの大学病院や全国のがんセンターが一挙に「セカンドオピニオン外来」を開設したことが影響しているようだ。
この外来を上手に取り込むのが、賢い医療ユーザーの心得だ。

医学ジャーナリスト 松井宏夫

 
  がんで亡くなる人が、日本では年間30万人を超える時代になった。その裏では、がんによる医療側と医療ユーザー側との悲喜こもごものドラマが展開されている。喜びはいいが、悲しみは極力少なくしたいもの。そのためには、セカンドオピニオンをうまく利用することが不可欠だ。とりわけ重大疾患のがんでは、その重要さが増す。
  肺がん治療の名医として知られる、東京医科大学病院第1外科の加藤治文教授(副学長)のところへも、セカンドオピニオンを求め、患者が訪れる。

  「ほかの病院で、肺がんの治療を受けていますが、『もうこれ以上治療法がなく、あとはホスピスしかない』と言われましたという相談が代表的です」
  このような相談に関して、加藤教授は、これまで行われてきた治療法が正しいか徹底的にチェック。それが問題なければ、果たして、ホスピスしか方法はないのか、検討を加える。
保険適用の施設も
 「症状によっては、手術の前にレーザーをかけることで、手術が可能になるケースもあります。ただし、これは研究段階の治療法。それを十分説明したうえで、この治療法を選択してもらうこともあります」(加藤教授)
  医療ユーザーは、セカンドオピニオンによって、それまでの治療を変更することも少なくない。一人の医師の治療方針を医療ユーザーが一方的に受け入れる時代は去り、複数の医師の意見を参考に、ユーザー側が納得できる治療法を選択するようになっているのだ。
  このようなニーズに応えるように、「セカンドオピニオン外来」を設ける医療機関が増えている。
  全国105施設から回答を得て、セカンドオピニオン外来を設けていたのは49施設。そのうち25施設は、昨年新設されたという。
  基本的には保険が適用されず、30分から1時間で5000円から3万円程度のところが多い。なかには、県立静岡がんセンターのように保険適用の施設もあるし、国立病院機構四国がんセンターのように「患者サービス」として無料で行っているところもある。

  最近は、施設が増えただけでなく、身体に負担をかける苦しい検査を、再度、再々度受けずに済むようになった。主治医から病状や経過を記した「診療情報提供書」や検査データー、エックス線写真、CT(コンピューター断層撮影)画像など一式を借りて、受診できるようになっているのだ。
  「セカンドオピニオンの客観的判断をさらに強めるために、将来は、セカンドオピニオンを専門にするクリニックができるべきだと思います。もちろん、十分ながん知識を持った医師の集団によって、です」
  と、加藤教授は、将来像を披露する。ますますセカンドオピニオンを利用する機会は広がるに違いない。